その男、猛獣につき
猛獣使いの不安
「あー、りー、たー!!!」

「はいっ!!」

月曜の夕方、竹内さんや嶋本さんと業務後の掃除をしようとしていると、プレゼン用の資料をチェックしていた先生がスタッフルームから声がかかる。

低くて色気のある声が、機嫌が悪いのか一層低く響きわたったせいで私は背筋が凍る。


私、何か変なこと書いたっけ?

先生の不機嫌そうな低い声に焦りながら、自分が提出したものを思い返す。

まるで昨日の出来事は夢だったのではないかと錯覚する位、先生はいつも通りで、というより、いつにも増して私の指導に気合が入っているせいで、今日は何かと注意を受けている。

それでも、胸元につけられた花びら一枚分の痣が、昨日の出来事が夢ではないことを教えてくれている。

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