その男、猛獣につき
「有田ちゃんは、新人の頃の興梠みたいだな」
有田から提出されたレポートを添削していると、課長から声をかけられる。
課長は、缶コーヒーを俺のデスクに、差し入れだ、と言って静かにおいた。
「はぁ、俺あんな感じでしたか?」
溜め息つきながら、スタッフルームからリハビリ室にいる有田の姿を見る。
悪戦苦闘しながら、バランスの評価をしているようだ。
「興梠も患者さんが一番で、熱すぎただろう。あっ、興梠はむしろ暑苦しかったな」
そう言って、課長は懐かしがって笑う。
「“適度な距離、適度な温度、ある程度の期待感”って、あの頃は課長に叩きこまれましたもんね」
俺が苦笑いしながら言うと、課長は少し照れくさそうにしながら
「そうだったけな」
なんて呟いて、リハビリ室に戻った。