シークレットな関係
再会のキス

今年は人生のうちで最凶の年だと思う。

まず、新年早々に働いていた会社が倒産した。

毎年買ってる占いの本には『今年の運気は下降の一途』と書いてあったし、初詣でひいたおみくじは大凶だった。

駅前にいた占い師に呼び止められて『あなた!男難の相が出てるわ!』と言われたし、道を歩いていたら側溝の蓋が外れて足を捻挫したこともある。

そんな散々な日々を送ってきたここ半年間、もうこれ以上悪いことは起こらないだろう。

いや絶対に起きてほしくないと願っていたのに、まだ続くようで・・・。


ファックスの流れてくる音とパソコンのキーボードを叩く音が響く静かなフロア。

話し声も小さくて雰囲気はまるで図書館のようだけど、ここは二十階建てのオフィスビルの九階部分にある通信販売会社の本社。

働き口を失ってからやっと見つけたお仕事で、今日から派遣社員として三か月の契約で来ている。

時給千三百円、九時から十八時までの八時間勤務。

短い期間とはいえ収入の途切れている私としてはとてもありがたくて、意気揚々と出勤してきた。

けれど・・・占い師の言っていた『男難』とはこのことに違いないと、仕事の説明をしてくれる男性社員を見てはため息をこぼす。

するとその男性社員である高橋和哉は、くるりと振り向き私の額をボールペンで軽く小突いた。


「痛っ」

「櫻井、お前はちゃんと聞いてるのか」

「はい。一言ももらさず聞いています。だから小突かないでください」


なんて乱暴な奴だ!と、ツキツキと痛む額を撫でながら口を尖らせて睨むけれど、高橋はさらりと無視してパソコンの画面を指差した。

< 1 / 119 >

この作品をシェア

pagetop