手を伸ばせば、きっと。

「ねぇ、お母さん。」

「ん?」

「私達が、引っ越すんだよね?」

「そう。向こうのお家、すごく広いの!」

「そんなことないよ~」

「そ、そうなんですか!?」

「大げさだな~。でも、華純ちゃんの部屋もあるから!」

「嬉しいです!」


ずっと心配だったの。

自分の部屋がないと、慣れるまではさすがにちょっと息苦しいから。


「悠都と部屋が隣になっちゃうけど、いい?」

「はい!大丈夫です!」

「それならよかった…」


私がそう答えると、雅也さんは安心した様に胸を撫で下ろした。

気がつくと無意識にデザートも食べ終わっていたようで、そろそろ店を出ることにした。



「またお待ちしております。お気をつけて」


スタッフの方が見送りまでしてくださって、私の初フレンチは終わった。


「「ごちそうさまでした」」

「いえいえ」


私とお母さんは雅也さんにお礼を言って、明日から引っ越しの準備を始めることを伝えた。

雅也さんは「帰りは用事がないから」と、私達は家まで送ってもらえることになった。

おかあさんは助手席、私は後部座席に乗り込んだ。


「今日は本当にありがとう」


ミラー越しに雅也さんと目が合って。


「私の方こそありがとうございました!初フレンチでした」

「はは、そうなんだ!」


雅也さん、本当にすごく優しい。
もうすぐ、雅也さんじゃなくなる。
私の新しいお父さんなんだ。

自然に「お父さん」って呼べるようにならないと。


…明日からの引っ越し準備、頑張ろう。







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