水男（ミズオ）

「ちひろ。私たちがこの町で
一番よ」


にっこりと笑ってボクが言った。


ちひろはボクの手を握る。
見つめあう二人。


「ありがとうボク。
あなたのおかげで勝てた」


ちひろがそう言うと
ボクは首を振る。


「違う。ちひろがいたから
ボクたちは勝てた。


ボクを一人ぼっちから
救ってくれたちひろがいてくれたから


勝てたんだよ」




高山君が絶望して倒れている隣で
繰り広げられる友情物語。


「カードゲームが弱いからって
私を馬鹿にした男子を


ボクがやっつけてくれた。


本当にありがとう」


ちひろはそう言って
ボクの手を引っ張って


店を出ていく。



2人はお揃いのトートバッグを持っていた。
ピンク色のかわいいバッグ。


「あの二人……仲良しなんだな」


かすれた声でつぶやく高山君。


バッグには名前が
刺繍されていた。


ちひろのバッグには


（ちひろ）と縫い付けられている。


高山君はボクの本名が


ちょっと気になって
トートバッグを目で追った。


そこにはこう刺繍されていた。