水男(ミズオ)
初夏の焼けるような日差しの中
若い男は立ち尽くしていた。



誰もいない公園。
セミの声。


シーソーの上に
コーラの缶。


したたり落ちる汗をぬぐいながら
男は目の前に立つ人物を


凝視していた。


その人物は
ランドセルを背負った小学生。


しかしなぜか若い男は
かわいい小学生を見て


恐怖の表情を浮かべている。




「お前は誰なんだ?」


男が質問しても
小学生は何も答えず

笑っているだけ。


「なぜ俺のすべてを知っているんだ!」


男は叫ぶとこぶしを振り上げた。


「太田さんは今、逃げ出したいと
考えている」


小学生はそう言うと
若い男を見てにこりと笑った。


「そうでしょ?」
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