【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。

来訪者は突然に






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休日の昼間。


学校が休みともあって、奥田さんが早くからお見舞いに来てくれていた。


香川くんは午後に一度顔を見せてくれるらしくて、今から待ち遠しい。


奥田さんと二人きりというのは最近ではあんまりなかったけど、私が敬語を使わなくなったくらいには話せるようになっていた。



いつものように会話に花が咲き出した頃、不意に奥田さんが切り出した。


「ねえ、媛華。ちょっと聞いていい?」


「なに?」


真剣味を帯びた、不自然にトーンの落ちた声色に半ば驚きつつも返すと、彼女は迷うように口を閉じた。



ここのところ、どうしてか、ふと黙り込んだり考え込んだりする事が増えてきたな、と思う事があった。


それに関しては私からあえて聞く事はなかったけど、ここまであからさまに悩ましい姿を見せてくるのは初めてのこと。


背筋を伸ばして私は、素直に聞き手側に回ることにした。


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