ボディーガードにモノ申す!


アパートに帰って誰もいない部屋で「ただいまー」とつぶく。


足の踏み場を探しながらカーテンを閉め、ベッドにたどり着いた私は服を脱ぎ捨てて下着のままゴロンと横になった。
身体を締めつけるものが無くなり、気持ちよく呼吸出来ている感じがする。
しかしながら、ヨレたブラのワイヤーが胸に当たってちょっと痛い。


「新しい下着買わなくちゃなー……」


ボソッと独り言を漏らす。
明日の帰りにでも安い下着のセットを買おうかな。
しばらく天井のシンプルな照明を眺めていたけれど、明日も仕事なので悠長にゴロゴロしている場合ではないことを思い出した。
すぐさま身体を起こして浴室へ向かう。


シャワーを浴びて、メイクを落として髪を洗って身体も洗って。
1日の疲れも排水口へ一緒に流してやった。


浴室を出たあとは身体を拭いたバスタオルを首にかけて、いつも通りに素っ裸で部屋の中をうろつく。
冷蔵庫からビールを取り出して、立ったまま一気飲みした。


「はぁ、やっぱり風呂上がりのビールは最高だわ!」


佳織ちゃんと飲んだことは飲んだけど、途中退場したのもあり飲み足りなかったから余計に喉が潤って美味しく感じる。
今の私は完全なるオヤジ女子だが、誰も見てないから気にしない。


田舎から出てきて都会で一人暮らしを始めてからというもの、誰もいない寂しさからか独り言が多くなった。
それは歴代の数少ない今までの彼氏からもよく指摘されていたことで、私は無意識のうちにテレビと会話したり、独り言をブツブツつぶやいているのだという。


でも別に誰に迷惑をかけているわけでもないから、気をつけることもなかったのだ。


佳織ちゃんに話していた通りに、身体の火照りがある程度冷めた頃に高校の頃に着ていたジャージを着用。
歯を磨いてベッドに横になった。





干物女、またの名をオヤジ女子。
それはきっと私、広瀬椿のようなことを言うのだろう。
でも外ではきちんと見た目にも気を遣って仕事もこなして、社会人としてうまくやっている。
だから家の中でくらい素の自分でいたい。


こういう女の子は、おそらく日本中どこにでもたくさんいるんだろう。


そう思いながら、その日は眠りについた。









< 14 / 153 >

この作品をシェア

pagetop