たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「……栞は、本当にそれでいいの?って言っても、向こうが会ってくれないなら仕方ないんだけど……でも、それにしても……」


「(いいの。全部、私が悪いんだもん。それにね、これ以上先輩に関わって、また先輩に迷惑を掛けることになったら、今度こそ私も立ち直れない)」



言いながら小さく笑みを零せば、アユちゃんは切なげに顔を歪めた。


……本当は、今でも先輩に会いたいよ。


毎日毎日、駅のホームで先輩の姿を探してる。


「おはよう」って、前みたいに優しく声を掛けてくれるんじゃないか、なんて夢みたいなことを思ってる。


もしかしたら先輩から連絡が来るかもと、寝ている間も携帯を握りしめている。


─── だけど、そんな希望を抱くのもいい加減やめなきゃいけないんだ。


だって、そんな希望を抱くことさえ、先輩には迷惑なことかもしれないから。


アキさんの話では、樹生先輩は今は受験に前向きに動いているという話だった。


だとしたら……私は、遠くから先輩のことを応援しよう。


先輩の夢が潰える事のないようにと、心の中で静かに応援し続けることが、今の私の精一杯なんだから。


 
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