たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「うーん……そうだよなぁ。でも、また何度か聞かれそうだしなー……」


「っていうか、そんなに気になるなら直接俺に聞きにくれば?って言っといてよ、それで解決するわけだし。そしたら、アキと同じ答えを俺から直接そいつに言える」


「あ、確かに!樹生から直接聞いた方が、あいつも納得いくよな!」



俺の言葉に、それは名案だと喜ぶアキ。


そんなアキには申し訳ないけど……多分、それを言えばそのサッカー部の奴は、今後アキに同じ質問をしにくくなるだろう。


俺に直接聞けと言われた時点で、アキはそんなつもりじゃなくても、今回の件に関してアキには匙(さじ)を投げられてしまった───


つまり、アキは自分ではなく俺の味方についたのだと判断するだろうから。


アキみたいに嘘のない人間に一度突き放されれば、同じ話題で頼ることは難しい。


それが、人間の心理ってやつだ。


だけどきっと、そのサッカー部の奴が俺に直接聞いてくることはないだろうな、なんて。


予測というより確定の事実を想定して答えを渡す自分は、本当に性格が悪いと思う。


 
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