四百年の誓い
 「優雅くん、合鍵持ってるんだ」


 単にログハウスの保有者一族だからだと思い、美月姫は大して気にも留めなかったが、


 「もしもの時のために、昔から床下の木目の隙間に隠してあったんだ。まさかこんな形で役に立つとは」


 鍵の紛失に備えての合鍵だったが、今こうして追われる羽目に陥り、合鍵があったためにこうして隠れ場所を確保できた。


 「二階の奥に、リネン室があるんだ。そこに隠れていよう」


 余分なシーツやタオルなどを保管するためのスペースが、二階に一室設けられていた。


 四畳ほどのスペースだが、二人が身を潜めるには十分な大きさだった。


 周囲に人が居ないことを確かめて、急いでログハウス内に侵入し鍵を閉める。


 リビングに置きっぱなしだった財布と、金庫の中の携帯電話だけは取り戻す。


 先ほどと様子が大きく変わっていれば、京が戻って来た時怪しまれるので、なるべく何もいじらないようにしてリネン室へと向かう。


 リネン室へと入り、中から鍵を閉めた。


 そこは屋根裏部屋のような場所で、屋根に接しているために壁が斜めになっていた。


 窓が一つあり、そこから月が覗いている。
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