四百年の誓い
 ほんの少し前までは、もう二度と恋はしないだとか、シスターになりたいとか、当たり前のように口にしていたのに。


 それがほんのわずかな間に、何もかもが変わってしまった。


 自分があんなに奔放だとは信じられないくらいに、ありのままに優雅を受け入れていた。


 過去のつらい記憶も、苦しみも……全て消し去ってしまいたかった。


 「……」


 美月姫はぎゅっと手を握り締めた。


 未だ身体中に残っているような気がする温もり。


 冷ややかな真夜中の風に消えていかないようにと願った。


 そしてほっとした。


 中途半端に終わっていた二人の関係が、再び色彩を持ち始めた。


 少なくともあの時は、いい加減な気持ちで抱いたわけじゃないと告げてくれた。


 それだけで気持ちが楽になった。


 たとえ死ぬまで添い遂げられることがなくとも、このまま美しい思い出として胸に刻んで生きていくことができて、美月姫は安堵していた。
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