Office Love
section 3-1
「はぁ?なんやて?何で、彩葉、貸し出すねん?」
営業一課に響き渡る真子の声。

「わかりませんが、今日から2週間だけ二課に行けと。部長から命令で。」

休憩スペースで、彩葉とコーヒー飲んどったら、申し訳なさそうに話す俺の愛おしい彩葉。
つい最近、修兵に邪魔されながら、手に入れたはず?の女。
何で貸し出しやねん。二課にもぎょうさん女はおるやんけ。
二課言うたら、ギンがおるやろ。ギンが。
あの世界イチの女誑しがよぉ。


こないだのコンペのプレゼンも一課の勝利で終わったから、今は特段急ぎの仕事ない。
そやのに、なんで、二課に彩葉が行くねん?


「なんだか、こないだのプレゼンの企画書がとても良かったとかで、お手伝いさせて頂いた私に協力して欲しいとかなんとか・・・・」

と、そこで言葉を濁しよった。

「誰が?」

すかさず、相手を聞く。

「市埼さんが・・・・」

ほら来た。みてみぃ、ギンやんけ。
あの男、ほんまに見境なんやんけ。

「断っとけ。俺から部長に後で理由言うとくさかい。」
「けど、もうこの後、市埼さんと打ち合わせで・・・」
「そやで、悪いなぁ、真子。今から彩葉ちゃんと、打ち合わせ。」

音もなくどこからともなく現れたんは、噂の市埼ギン。
もう彩葉の肩に気安く手乗せとる。

「ギン、その手、退けぇ。」

地から響く様な声でギンに言うたった。

「おぉ、怖ッ。なんもせーへんよ。僕かてそんな見境ないことないわ。親友の想い人、横取りするようなヤツちゃうし。」


想い人てなんや?想い人て!!
彼女や!彼女!!
そやかて、こないだ「まだ平川さんには堕ちてませんよ。」とか、言われてから、なんも甘い進展はないからなぁ。
ほんまに付きおうとるんかもわからん。
って、そんなことない!!キスもしたやんけ。

とか、考えてたら、彩葉連れて行ってしもたやんけ。
慌てて二人の後を追うて、彩葉に声を掛けたら、不思議そうに小首を傾げる。
その姿も俺をそそる要因でしかなく。って、ギンも見てるやないかい!
袖を引っ張って連れ出せば、

「どうしたんですか?」

と、聞いて来る。

「ギンには気付けや。」
「はぁ。」
「はぁ。ちゃうねん。気付け言うたら、気付けやッ」


クスクスクスと笑いながら、理解したんかしてないんか、彩葉は軽く俺に会釈をしてギンの後を着いて行きよった。



< 12 / 51 >

この作品をシェア

pagetop