Office Love
遊覧船の上で、潮風に当たって靡く銀髪に、鼻腔を擽る香り。そっと君に近づけば・・・・・


「市埼さん!!!見て見て!!」


って、君にはロマンティックって言葉ないんかな?
僕が君のために、今日は最上級のオシャレして、ちょっとでも君の鼻腔を擽ったらええ思て、官能的な香水まで着けて来たのに、それでもあかんか?


「美咲ちゃん・・・・」
「何ですか?」


どないしたら、この子に僕の気持ちを気付かせて、こっちに向けれるねやろ?
こないなタイプ初めてやから、ちょっと焦る。


ほんまやったら、ここで、名前呼ばれて、見つめられて、僕が何も言わへんかったら、ドキドキして、これから何が起こるねやろ?って期待して、で、もしかして、私、この人に惹かれてる?とか考えて・・・・って、またおらんやん!!
このパターン、なんか慣れてきた(笑)


けど、僕かてそないに気長い方違うから、もうここら辺んで決めとかなあかんなと思ってんねん。
そやないと真子に笑われそうやしな。


海を眺めてる彼女の横を取って、斜に構えて名前呼ぶ。
もちろん、彼女はこんなことでは動じへんのは分かってる。


「美咲ちゃん…」
「何ですか?市埼さん。」


き、聞こえたんかいな、今回は。何か、調子狂うなぁ。


「美咲ちゃん、今日は何で来てくれたん?」
「えっ・・・・////」


この反応ちょっとは期待してええ?


「何で?」


いつもより数段甘い声出してるで、僕。


「市埼さんだったから・・・・・/////」


ん?
消え入る様な声やったから聞え辛かったけど、『市埼さんだったから』言うた?
僕にはそう聞こえたで。
そっと腰に手回して、耳に囁いたら、いけるんと違う?


「それは、君が僕に気ある、言うこと?」
「けどッ!!!うわっ////ちかいっ」


って、僕、今、君の耳元で囁いてんのに、急に顔こっち向けたら、そら近いやろ。


「けど、市埼さんに遊ばれるのはイヤなんです。」
「えらいはっきり言うねぇ。」
「それは、市埼さんは社内切っての女誑しですから。」


よう本人目の前にして言えるな。君、凄い。


「けど、僕、この前、宣言してんよ、聞いてへんかった?」
「何をですか?」
「『社内イチ女誑しの称号返上』って、フロアで言うたのに。」
「そ、そうなんですか・・・聞いてなかった・・・ははは・・・」
「君、ほんまに天然って言うか、小悪魔って言うか。面白い子やね。」
ま、そやから僕の興味惹いたんやけど。


最後の方は君に聞こえんように言うといた。



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