Office Love
午後いち、携帯を取り出し胡蝶に連絡を取る。
【今日、晩飯一緒にどうだ?】
【残業がありますので、時間がわかりません】
【お前が終わるまで待ってる】
【終わり次第連絡入れます】
胡蝶と晩飯の約束を取り付け、定時過ぎ1時間で俺は終業。
2課は何やら次回コンペの用意とかでここ最近ずっと残業続きだ。



胡蝶を手に入れた日から、社内で昼飯食ったり、終業時間が合えば夕飯食ったりはしたが、まともにゆっくり話たこともまだねぇ。
することもねぇ俺は胡蝶のデスクへと視線が勝手に動く。
パソコンに向かうその顔は真剣そのもので、眼鏡によって隠されてはいるが、端正な顔つきに見惚れる。
モニターと資料の上を行き来する瞳が俺を捕えないだろうか?とジッと見詰めちまう。


この俺が、この佐々木修兵が一人の女に納まっちまうだなんて、自分でも可笑しくて笑っちまう。
どこのどんな女と付き合っても、ここまで俺がのめり込む女は後にも先にもコイツ以外いねぇと思う。
それくらい俺を本気にした女。


「佐々木さん。」
「あっ、悪りぃ、悪りぃ。終わったか?」
「はい、終わりました。」


ぼーっと胡蝶の事を考えてれば、仕事の終わった彼女に声を掛けられる。


「何かありましたか?」


急に飯に誘った俺に不信感を抱いたのか胡蝶が聞いて来る。


「あぁ、明日からギンのアシスタントだってな。」
「はい、私なんかで務まるのかどうか、不安です。」


そこ不安がるとこじゃねぇだろ。
ギンがお前に手出さねぇか、そこが不安だ。


「どうかしましたか?」


あんまり俺が黙りこくって胡蝶を見つめるもんだから、胡蝶の瞳は不安で満ちてく。


「いや、俺が不安なだけ・・・」
「何に?」


そう言って潤んだ瞳で小首傾げて見つめられりゃ、ギンじゃなくたってそそられるだろ。


「胡蝶・・・・俺のもんだよな?」
「え///どうして、また・・・・」


不安なんだよ、こんなにも不安になったことなんて今まで一度もなくって、この感情に俺自身がどうしたもんかと困惑してる。
けど、これが本当に人を愛すってことなんだろうなって思う。


「俺だけの胡蝶だよな?」


俺の鼓動は、いつになく早鐘を打ってて、どんな女にくさいセリフ吐いてもこんな気持ちになった事もねぇのに、胡蝶の返事を聞くのが怖くって、高鳴る鼓動を抑えきれねぇ。



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