Office Love
「で、修兵。何なん?僕に用事?」


俺が聞きたいことなんて、わかってるやがるのに、遠回しに聞いてきやがる。


「別にギンに用事あるんじゃねぇよ。真子にあんだよ。」
「ええやんけ、本人に聞けや。」
「胡蝶ちゃんの事なん?」


ギンは薄々気付いてる。
けど、真子は俺と胡蝶の関係は全く知らねぇはずだ。


運ばれて来る昼飯に手を付けようとも思わねぇ程、苛立ってた。
ギンにも真子にも。


「お前が何か言いた気だったんだろ、真子。」
「あー、まぁな。俺、貴井さんとお前の仲はどないなってんか知らんけど、ギンのことならよう知ってんで。」



何を言いたいのか真子の思わせぶりな態度にイライラしながら、食堂の入り口に目を向ければ、真子の彼女が後輩を連れて入って来た。


「七瀬!一緒に飯食う?修兵君が奢ってくれるて。」


ニヤリと口角を上げ、真子はいとも簡単に自分の彼女を引き込む。


「お疲れ様です。佐々木さん。」


そういや、こないだコイツに迫ったまぁなんて頭の片隅で考えてたら、もう一人の女がギンの横を陣取った。
確か、コイツは一課の・・・・・


「九条美咲です。」
そうそう九条美咲。結構可愛い顔して天然キャラ満載の・・・・
「僕の彼女。」

は?今、何つった?俺の耳は何を捕えた?


「何ちゅう顔しとんねん、修兵。あほ面丸出しやぞ。」


クスクスクスと横で笑う二人の女を見ても、正気を取り戻すのに時間が掛かった。


「ギンの彼女?」
「そや、僕の正真正銘、か・の・じょ・」
「ギンが彼女?」
「おい、修兵。あまりの驚愕に日本語おかしなっとんで。」


自分でもどんな言葉を発したかわからないくらい驚いてた。
あの【市埼ギン】が世界一女誑しの【市埼ギン】が彼女、いや、特定の女を作ったって言うのかよ?
誰でも耳疑うだろうよ。


「あー、そういや、修兵、お前が啖呵切った日、おらんかったわ。」
「なんだよ、啖呵って?」
「ええねん、そないなこと。ただ、僕は今、この子にぞっこんや言うことだけ、教えとたるよ。」
そやから、心配しいな。


お前に囁かれても何にも嬉しくもないわ。
けど、二人の様子見てれば、ギンがこの子にご執心なのは一目瞭然で、胡蝶には手は出さねぇってことか。
けど、天下の市埼ギンを易々と信用できるはずもねぇけどな。


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