Office Love

-3

On Christmas Eve~修兵~


パタンPCを閉じ、三課の方へと視線を移す。
修兵さんが部下の女の子と親し気に話す姿が目に入る。
今日はクリスマスイヴ。
こんな日に暗い気持ちになりたくない。


1週間前、修兵さんから言われたイヴの予定。
残業があると思うと言えば、市埼さんに掛け合って、その日の私の残業はなしにしたと言う。
その日は空けとけ、とだけ伝えられた内容に、もちろん私の鼓動は高鳴った。
修兵さんに言われなくても予定は埋まらなかった私のイヴ。
今年は修兵さんと言う恋人が出来て、大きなイベントは少なからず埋まる事になった。


仕事を終えたのに、修兵さんの元へ行けないのは、貴方が他の誰かと楽し気に話してるせい。
自席でその様子をただ見てるだけの私に、市埼さんが声を掛ける。


「早よ行ったげ。何してるん?」
「えぇ、まぁ・・・・」


その戸惑った返事に市埼さんは修兵さんの方へと視線を移す。


「気にすることちゃうと僕は思うよ。」


視線の先、修兵さんが部下の女の子と親し気に話してる姿に市埼さんは言う。


「堂々と行ったらええ。修兵もそれを望んでるわ。」
君は何もわかってないんやね。


そう耳元で囁かれれば、その甘い京訛りに神経がヤられそうになる。
と、息を切らして佇む修兵さんが目に入る。


「おい、ギン。」
「おぉ、怖ッ。真子に修兵に、ほんまに僕、嫌われたもんやわ。」


そう肩を竦めながら、市埼さんは最後にもう一度、私の肩に手を置き、再度耳元で囁く。


『今日は修兵にぎょうさん可愛がってもらい。』


その言葉に私の頬の温度は一気に上昇し、修兵さんの顔さえ見られなくなった。


「何言われた?」
「何って・・・・・」


言われた内容を口に出すのも恥ずかしく、また、私の嫉妬心も剥き出しだったのがバレやしないかと口籠ってしまう。
市埼さんの言葉が頭の中で反復する。


(気にすることちゃうよ・・・・・堂々と行ったらええ・・・・)


「ちょっと、妬いてたんです・・・修兵さんが部下の子と仲良く話してる姿に、どうしても入って行けなくて・・・・そこを市埼さんが助け舟出してくれて・・・」


その瞬間、修兵さんの顔が一気に破顔して、真っ赤になった様な気がした。


「えっ?」
「照れる///照れるし、嬉しい・・・///」


自分では気持ちを素直に言っただけなのに、それが修兵さんをこんな顔に出来るだなんて思ってもみなくて、私も嬉しくなって。


クスクスクス・・・・・


悪戯に笑ってしまった。


「笑うなよ。ここじゃ何だから、もう行こう。」


そう修兵さんに背中を押されて社を後にした。






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