その時にはもう遅かった
だって本当によく食べてる。

私の質問に目を丸くすると夏目くんはまた視線を宙に逃がして苦笑いを浮かべた。

「まあ…腹ぐらいは満たしておかないと、神崎さんを食べかねないから。」

「ぶっ!」

とんでもない発言に口に含んでいたアルコールを噴き出しそうになる。

今なんて言った!?

信じられないものを見る目で私は反射的に夏目くんの方を向いた。

「な、何言って…っ?!」

「さすがに今日はするつもりないけど。」

「ああああ当たり前でしょ!?」

信じられない!

ただでさえ赤い顔が爆発しそうなくらいに熱を持って痛いくらいだ。

「強引にでも行っていいなら今日襲いましょうか。」

いつの間にか距離をつめ耳元で囁かれた言葉に体が跳ねる。

痛い。

顔も心臓も反応しすぎて涙目になってきた。

なのに夏目くんは楽しそうに笑みを浮かべてまた距離をとっていく。

「分かりやすい反応で助かります。」

またいつものように決め台詞を出してはジョッキを空けた。

「嫌がっているようには見えないけど、これは自惚れではないでしょ。」

今の私に返事をする余裕なんてない。

ただ黙って夏目くんを見つめたまま固まっていただけなのに彼は嬉しそうだった。

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