To smile
不思議な力


数日間の検査とリハビリを終え、

私は無事に退院の日を迎えた。


ハルトさんは基本どこかをフラフラして、

私が1人になった時だけ

少し話をするくらいだ。


昨日の夜、これからについて話したことを

思い出す。




「名前以外で覚えてることって、

何かないんですか?」


少し考えてから返ってきた答えは、


「バイク乗ってて事故った。

あーあと、バイクで学校とか行ってたから、

大学生かな?」


ということだった。


「それなら新聞とかで事故の記事を探せば

すぐ見つかるかもしれないですね!!」


楽観的な私に向かって、

ハルトさんは溜め息をつきながら告げる。


「いつどこで事故ったかもわからないし、

そんな簡単にはいかないと思うけどね…。

まぁ、頑張って。」



あきらかにやる気のない態度に、

私は思わず反論する。


「ハルトさん!

確かに探すって言ったのは私ですけど、

一応自分のことなんだから…」



「ストップ!」


「え…!?」


「この前から思ってたけど、

さん付けとか敬語とかいらないから。」



まさかそんなことを言われるとは

思ってなかった私は、

暫く顔を見たままだまってしまった。

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