あの日、あの時、あの場所で。
「先生…?今なんて言ったの?」


「藤崎組の若頭くんが蓮也くん。
瑞江財閥の坊ちゃんが恭太くん。
鈴花総合病院の跡継ぎが美穂ちゃん。」

「なんで…?継がないって言ったじゃない!鈴花さんのところにはもう行かないわよ?」

「行かなくてもいいから、継ぐ。というのが条件だったろう?」

「鈴花さんに言っておいて。
私にはこの病院は継げません。と」

「なぁ…美穂。嘘だろ?」

「美穂ちゃん…どうして黙っていたの?」

「ごめんなさい…言えなかったの…」

「みんなの方が辛いのに私のことなんて言ったらもっと困らせる…っ!」

「ばーか笑なんで美穂はひとりで抱え込むんだ?俺らの悩みを軽くしてくれたのは、美穂のその優しい笑顔なんだよ?」


「そうだな!杏奈だって、そんな美穂ちゃんだったから話してくれたんじゃないか?」


「杏奈が…?」


「それに、杏奈、言ってたよ。」


美穂は、私の光なんだよって。
私は月だから、美穂が太陽になってくれないと私は輝けないんだって。笑いながら言ってくれたよ?
俺はそんな美穂ちゃんになれたらいいと何度思ったことだろう…っ」


「杏奈…っ!」


「その後、杏奈は美穂が私の悩みを聞いてくれたように、美穂の悩みも私が聞いてあげたいって言ってたよ」


「蓮…。お前…」

「恭。俺な、本当は怖かったんだよ。
本当のこと言って、杏奈に嫌われたらどうしようって…」

「言ったのか?」


「あぁ…」


「なんて?」


「俺は俺だろって…だったら怖くないって…っ!もっと早くいえば良かった…」

< 77 / 114 >

この作品をシェア

pagetop