不器用な愛を刻む
中へ進めば
さっそく仕事について教え込まれ
色々と手伝わされることになった。
主に椿は料理を運んだり
接客する係で
善はその裏で力仕事をしたり
材料を取りに行ったりしていた。
今まで戦い専門だった善にしてみれば
苦手分野のはずだが
どうも器用なのか
すぐに色々とこなしてしまう。
「待たせたな、お嬢さん。」
「あ…あ、ありがとうございます…!」
そして
何かと人が必要ということで
善も接客を手伝うことになったが
それが───なんとも大評判で。
「お兄さん、アタシにもお茶1杯!」
「私にもおくれ!」
「わ、私にも…!」
「あぁ───承知した。」
特に、その人気層は女性。
善はいつもと変わらず
あの妖しい笑みを浮かべているのだが
それがどこか色っぽく感じるのか
女性客はその表情に
メロメロだった。
その様子を椿ももちろん見ているけれど、
仕事と割り切って
気にしないように努めていた。
…とはいうものの、やはり気になる。
(……善様…。)
お店のために貢献できているのだから
良いじゃないか、と思いながらも
やはりどこか───モヤモヤする。
そんな気持ちを抱きながら
店内の様子を見ていた椿に
突然
後ろから声がかかった。
「今帰った───って、
……アンタ誰だ?」
「───!!」
その声に驚いて
椿がパッと後ろを振り返れば
そこにいたのは
自分と変わらない年頃の
青年だった──。