不器用な愛を刻む





それから少し喜一と会話をしてから
2人で店を出る。






「すいません…お茶代まで出して頂いて…。」

「こっちが付き合わせたんだから。
椿ちゃんは気にしないでよ。」






買い物の途中なのに
連れ出したりしてごめんね。




喜一は笑顔で椿にそう告げる。


そして頭を優しく撫でてから
椿に向かって手を振った。







「元気出してね。
じゃあ、お買い物頑張って。」







そう言って歩き去って行く彼に
椿は一礼して

彼女もまた歩き出した。




…先ほどまでの
苦しい不安は少し和らぎ

椿はきちんと買い物を回ることができた。




お茶の葉と食材を買い、
念のため治療道具も少し購入した。






(…喜一さんに会えてよかった。)






人の言葉がこんなに安心できるものなのかと実感した椿は

心の中でそんなことを思いながら
喜一に感謝を思う。





(さっきもらった髪留めは
記念に…棚にしまって置こう。)






そう考えながら

椿はゆっくりと帰路を歩いて行った。







< 28 / 180 >

この作品をシェア

pagetop