不器用な愛を刻む
(……帰って…来ないなぁ…。)
---それからしばらく過ぎて
また夜がやってきていた。
仕事は全て善の行う内容のため
椿はすることもなく
店内や家を掃除した後は
ボーッと、彼の帰りを待つしかない。
椿は椅子に座って
月明かりの差し込む窓辺を眺めていた。
(…善様の定位置はいつもあそこだよなぁ…。)
そこから外を眺めて
煙菅を吸いながら、もの憂い気に何かを考えていたりする。
黙りながらそんな表情をする彼を
椿はずっとそばから眺めていた。
…そんなことを思い出しながら
椿はふと立ち上がって
その彼の定位置へと 足を運ぶ。
(…いつもここから、この景色を見てるんだなぁ…。)
前に彼が呟いていたように
すでに桜は散ってしまって、
寂しい様子の木がたくさん並んで見える。
…下に見える町も
先ほどまでは賑やかに栄えていたのに…。
そんなことを考えながら
何だか物悲しさに浸っていた時だった。
-----ガラガラガラ…
「---------!!」
ふと店の玄関の
戸が開く音が-----した。