キミは僕に好きとは言わない

「なんで、今度は逃げないんだよ」



「はぁっ……はぁ……」


今にも潰れそうな喉で振り絞るように息を吐く。

適当に入った教室で、わたしは崩れるように膝をついた。


っ……どうしよう………逃げてきちゃった。


桃矢は悪くないのに、一方的に怒りをぶつけるなんて情けない。

きっと今頃、呆れてため息でも吐いてる頃だと思う。

もしかしたら、今の一瞬で嫌われちゃったかも。


「…やだ……やだよ……」


本当はあんなことを言うつもりじゃなかった。

蓮先輩と別れたことをちゃんと伝えて、決心がついたら桃矢が好きだよって……………。


もっと早く自分の気持ちに気付けていれば、蓮先輩も桃矢も傷つけなくてすんだのに。


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