きみに触れられない

この声が枯れるほど

それから私は学校を出た。

校門を通過したところで屋上を見上げてハルの姿がないか探したけど、どこにも見当たらなかかった。

はあ、とため息を吐いて家路に着く。

空はだいぶその色を濃くして、家々から漏れる明かりを頼りに歩いていた。

今日は新月なのか、月も出ていない。

ところどころに雲が現れて、いくつかの星明りも隠れてしまっていた。


「ただいまー」

「お帰り、遅かったわね」

家に帰るとお母さんから心配された。


「あんまり遅い時間に帰ってくると危ないんだから」

「美咲はこれでも女の子なんだからな」


お母さんのお説教にお父さんまで出てくる始末。

というかお父さん「これでも女の子」ってどういう意味ですか。


そんなことを思いつつも、お父さんが「テンション低いな」と私の顔を覗き込んだ。

「え?」

「まあ、何かあったの?」

両親そろって心配してくれるのは嬉しいけれど、照れくさいというか、とても両親に話せるような内容じゃなくて、私は「何でもないよ」と言った。

むしろハルのことを話してしまう方が私にとってはとてもリスクのあることだと思った。
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