続★俺だけの家政婦さん
「新規?」

「そう珍しいでしょ。文英書房の谷口社長経由での依頼だから受けたのよ」

文英書房と言えば文芸書、文庫本を始め若者に人気の雑誌を多く発行している

出版社だ。

私の好きな野島景の作品も文英書房から多く出版されている。

その社長さんからの紹介なら所長もノーとは言えないだろう。

「で?その新規の担当者を私が?ってこと?」

所長は頷くが、表情は渋い。

「う~~ん。その予定なんだけど・・・…」

所長にしては珍しく奥歯に物が挟まっているような言い方だ。

「所長?何かあるんですか?」

気になって聞いて見る。すると視線だけど私に向ける。

「住み込み希望なのよ」

「へ~~住み込みね~~って・・えええ?!住み込み?!」

住み込みとは言葉のままで、依頼主のお宅に住みながら仕事をするんだけど

私は未経験だ。

もちろん、竹原家政婦紹介所では住み込みの家政婦もいる。

でもその多くは私よりも年上の人ばかりだ。

だったらそういうベテランさんにお願いしてみたら?と

提案してみたが、所長は首を横に振る。

「依頼主って言うのが小説家らしいのよ」

「小説家?」

その言葉に私はすぐに反応した。
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