あなたの愛に深く溺れてしまいたい
「ごちそうさまでした。お皿、洗いますね」

「あぁ、悪いな」

「いえいえ」


キッチンに立って、お皿を洗い始めると、柴咲課長が何か言いたそうに隣に立った。


「なんですか?お皿割ると思ってます?」

「まさか。そんなんじゃない。さっきのを考えていた」

「さっきの…ですか?」

「俺の出来ないこと、だ」


柴咲課長…一応、考えてくれてたんだ…。


「考えてみたが、何しろ一人暮らしが長いからな。ある程度のことは、なんでも出来る」

「ですよね……」

「ただ、苦手なことならある」

「苦手な、こと…?」

「あぁ。高いところが苦手だな。高所恐怖症ってやつだ」


柴咲課長が…?高所恐怖症…?


「あとはそうだな…。辛いものが苦手だな。唐辛子とか、そういうのは苦手だ」


高所恐怖症に、辛いものが苦手…。


「苦手なことなんか、いくらでも出てくる」

「そう、なんですか…?」

「あぁ。俺だって人の子だ。完璧な人間なんかいるかよ」

「………」

「たまたま俺は料理が出来るだけだ。雪乃だって俺より出来ることがあるはずだ」

「柴咲課長より、出来ること……」

「あぁ。それを二人で見つけていくのも楽しいんじゃないのか?」


柴咲課長の言うとおりだ。色んなことを見つけていくのは楽しいことだよね。でも…。


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