部長の溺愛に困惑しています。
「…もしもし」


ややキレ気味で電話に出る部長に、私は苦笑いをしてもらったばかりの指輪を眺めた。

ニヤニヤしてしまい、今すぐにでもみんなに自慢したい気分だよ。





「はぁ?マジかよ、ちょっと待て。すぐ行くから詳しく聞かせろよ」


何やら顔をしかめた後で電話を切った部長に、私は様子を伺いながら話しかける。




「どうかした?」

「お前に今あげたアイシャドウ…来年の春に発売されるかもしれない」

「えっ」

今貰ったばかりのこのアイシャドウを?




「ったく…俺とお前だけの物にしたかったのに」

「フフ、でもこれ絶対に売れますよ」


色も綺麗だし見た目も可愛い。

それにこんなに素敵なんだもん。




「まだどうなるかわかんないけど、正式に売るってなったからには何が何でも売ってみせるよ。その時はお前も営業部の社員だ」

「はい」


春が来たら…部長に一つ近づける。

それまで頑張る。

何度だって頑張る。

ずっと頑張るよ…
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