⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
完全にラブシーンのギャラリーと化した板倉愛美は、半ば放心状態で、いつまでもほどけぬその容(かたち)を眺めていた。

…こういう女、一番キライ。
 
天然ボケたフリをして、いつも男の望む答えを持っている。
弱そうに見せて実に強か、無邪気に見せて計算高い。

そして私は___

いつもそういう女に敵わない。


同じくそれを眺めていた熊野吾郎が、彼女の肩をポンと叩いた。

「はかりしれないよなあ…外野には」
「………」
愛美はプイッと視線を叛けた。

“ま、仕方無いか”
フウッと熊野は溜め息をついた。

「帰ろうや。なんかお邪魔みたいだし……な?アンタ」

「離してよ馴れ馴れしい…一体誰よアンタっ!ち、ちょっとおお…‼」

熊野は、喚く愛美を半ば強引に引っ張って、黙って大神家を後にした。


大神、トーコちゃん。
しっかり見せてもらったよ、
お前らの呼吸、造り上げた空間を。

今日は言い損ねたけど。
俺は下らない事にもう拘らない。

彼女とシアワセになることにかけちゃあ、お前らには負けたくないからな。


「うおーーーーー‼俺はヤルぞーーー‼」

「な、何よアンタ、ウルサイわよっ。
止めなさいっ、恥ずかしいったら‼」
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