⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
第2話 2人の世界
結局押しきられた俺は、シブシブ熊野を連れて自宅へと戻った。

「ただいま」

……ダダダダダッ

カチャリと玄関を開けると、薄暗い廊下の奥から、猛突進する小さな影。
「アッキトさ~~~ん♥」

それはピタリと目の前で立ち止まり “アレ?”と一瞬、戸惑いを見せる。

オッケー、予測の範囲内。

お約束どおりに、俺でなく熊野の方へ飛び付こうとする奥さんを、サッと割り入って抱き止めた。

いつものようにスリスリと、胸に頬擦りしてくる彼女の顔を両手で挟み、甘い調子で嗜める。
 
「コラコラ、走っちゃダメだって。いつも言ってるだろ?
コケでもしたらどうするんだ、オマエともどもガキがヘシャゲて…」

「大丈夫ですよぉ、そんな簡単に……ん~っ」

抱き上げてから口づける。

3度目くらいの息継ぎの時、不意に後ろから声がした。

「あの、お取り込み中スイマセンが……」
「オヤ?」

2人でくるりと振り返ると、途方に暮れるヤツの姿が。

「あ、ゴメン……」
「く、熊野サン⁉」
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