⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】

「秋人の焦燥」

「はぁ~~…お家に……帰りたくない」

今朝から俺は、100回目の溜め息をついている。

「へ~、隠れ愛妻家の専務が帰宅拒否とは珍しいですね。あ~、分かった!
喧嘩でしょ?家庭って大変っすよね~」

分かった風の独身貴族、堂林にゴチンと軽く拳を食らわす。

「イテテ…乱暴だなあ、ってことは “当り” ですね!?
そうだ!ひさしぶりにあそこ、行っちゃいますう?」

堂林の期待に満ちた目に力なく首を振る俺。
そうしたい気持ちはヤマヤマだが、帰らないワケにはいかない。
そんなコトをしたら今度こそトーコに愛想を尽かされてしまう。


重たい足を引き摺って、俺はトボトボと帰路についた。

「……ただいま」
ダダ下がりのテンションで玄関に立つと、

「「おっかえりなさ~~い」」

競うように玄関に立つオクサンとあの女。

うっ……

一瞬迷い、2人同時にいきそうになった末、トーコを選んで抱き寄せる。

「え~パパぁ、アタシはぁ~~?」
「ヤカマシイわっ」

口を尖らせ、甘ったるい声を出す女にまずは一喝。
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