⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
その夜____

「ええ~~、カノン、パパとがいい~」
「ダマレ、パパじゃねぇ!」

ワケの分からんコトを言う彼女をフユキの寝室に押し込めた後、俺は遅すぎる夕食を採った。

「ほーう。
……全く覚えていない、と」

トーコは俺の対面でイヤに冷めた口調で言った。

「ほ、本当なんだ!ただ……ゲホッ」
今夜の小エビのかき揚げは、やたらと喉に詰まる。

「記憶にございません、ってワケですか」

麦茶でかき揚げを流しつつ、コクコクと頷く俺に、彼女は深い溜め息を吐いた。

「だけど俺はっ」

「……わっかりました…」

トーコは俺の言葉を止め、毅然と言い切った。

「妊婦サンを放り出すワケにはいきません」

「トーコ……」

「………ま、いつかはこんな日が来るんじゃないかと思ってましたから。
それにね……
“どなたの” お子さんだとしても、アカチャンに罪はないわけですし?」


ゲホッ。

再び小エビを喉に詰まらせ、慌ててお茶を流し込む。

彼女はもう一度嘆息を吐くと、空のグラスを持って席をたった。



ともかく。

こうして俺達の同居は始まった。
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