それを愛と呼ぶのなら
「あるなら言って。どこでも付き合うから」


戸惑う真尋と、視線が絡む。

逃げられないと悟ったのか、彼はやっぱり少し遠慮がちに口を開いた。


大阪市を離れ、南の方角へ向かう。

目的地までの所要時間をケータイのアプリで調べたところ、50分ほどだった。


「結構すぐ行けるみたいよ」

「……ほんとに行くのか」

「行きたいんでしょ?」


さっきからずっと浮かない顔の真尋。

まぁ、色々な事情を考えると、その気持ちはわかる。

今だって、頷きもしないし首を振ることもしない。

それは、彼の中で2つの感情が渦巻いているからなんだと思う。


「直前で逃げたくなっても、それはそれでいいと思うわよ。でも、会いたいって気持ちが少しでもあるのなら……向かうだけ向かってみない?」


無責任な言葉だと思う?

10年前に離婚して以来、一度も会っていない母親に会いに行け……だなんて。
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