それを愛と呼ぶのなら
弾かれたようにビクッと体を跳ねさせた真尋は、石像にでもなったかのように微動だにしなくて。

きっともう、その表情に笑みはない。


「真尋……真尋なの……?」


呼ばれたのは私じゃないけれど。私が先であるべきじゃないことは、わかってたんだけど。

それでも、私が先に振り向いてしまった。


「……っ」


予想が的中してしまった。

深い紫色の着物を着て、黒い髪を結わえた女性。その目元はやっぱり、どことなく真尋に似ているように思う。


その場だけ時間が止まったような、そんな感覚を覚えた時、真尋がゆっくりと体を反転させた。

それを合図にまた、真尋が仮面を被る。


「真尋……っ!」


駆け出した真尋のお母さんは私の横を通り抜け、飛びつくように真尋に抱きついた。
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