紳士的な狼の求愛

というわけで、翌週、挨拶と引き継ぎを兼ねた商談。
私、渚ちゃん、原田君、メーカーさん。

結局、有馬くんには連絡できていない。
完全にタイミングを逸した。


原田君の帳合メーカーが入れ替わり立ち替わりブースに入り、そのたび、ご挨拶して、後任を紹介して、主力商品を簡単に説明してもらう。

最後のメーカーが終わる頃には、外は暗くなっていた。

「じゃ、最後にまとめ、やりますか! 有馬さーん、お願いしまーす」

はいっ⁉︎

原田君が待ち合わせスペースに声をかけると、
……にっこり笑う有馬くんが、いた。

確かに事前にもらったタイムスケジュールには、〈まとめ〉ってあったけど!
有馬くんが来るとか、きいてない!

「ではまとめに、うちのマーケのエースから、市場動向のご説明をさせていただきます!」

元気に仕切る原田君を睨むと、奴は、テヘ、と笑った。

渚ちゃんが名刺入れを持って立ち上がる。

仕方なく、私も。

……どんな顔していいのか、わからない。


有馬くんは、商品分類や市場動向について、初心者向けに内容を簡単なものに変え、噛み砕いて説明してくれた。
今、渚ちゃんの頭の中では、さっきのメーカーさん達の話が、整理されてることだろう。
難しい話をわかりやすく説明することほど、その人の力量が問われることはない。
改めて有馬くんはすごいと思った。


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