Tender Liar
――ねえ、融。「ここ」って、どこ?融は、どこにいるの?
心の中で、私は叫んでいた。
彼の名前を、何度も、何度も。
「トール」。
あの頃の私は、呼びたくてもそう呼べなかった。
三上さん、というのが精一杯で。
そして、ただひたすらに、彼が好きで。
けれど、諦めなくちゃいけない、と思っていた。
当時の、彼の恋人のために。
それから、今私の隣でハンドルを握っている、彼女のために。
そんな過去に想いを馳せていると、突然車が停まった。
ふと見ると、目の前に病院が建っていた。
待ってて、融。
今、会いに行くから。