花京院家の愛玩人形


「花京院くんって美化委員だよね?
私もなの。
委員会、一緒に行こう?」


教室の窓際最後尾の席で黙々とスクバにテキストを詰める要に、ユイは声をかけた。

学期初めに、サボれると踏んで適当に立候補した地味な委員だったが、こんなカタチで功を奏するとは。

男女ペアで同じ委員。
スイーツ(笑)あるあるな接点じゃん。

しかも委員活動が活発になる年に一度の美化月間がまさに今とか、神が味方したとしか思えない。


「…誰?」


目も合わさずに要は問い返す。

名前も知らねェのかよ、コノヤロー。

だが、まぁいい。

『出逢い』は始まった。
二人が恋に落ちるまでの流れが始まった。


「ユイだよォ。
今まで委員会に参加できなくて、ごめんね?
予備校とか忙しくってェ」


多くの男を虜にしてきた甘ったれた口調で詫び、ユイは拳で頭をコツンする。

だけど…


「あ、そう」


要は素っ気なく言って立ち上がり、スタスタと教室の引き戸に向かってしまった。

あれ?

流れ、ブった切ったカンジ?
むしろナニも始まってないカンジ?

てか、キラキラ女子のモテ仕草で、頬を染めないどころか眉一筋動かさないとは…

あのドーリィ美少女がいるからか?
こんなん慣れっこってか?

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