花盗人も罪になる
「……そうかな?」

ずっと黙って話を聞いていた春菜が突然口を開いた。

「紫恵の旦那さんはどうか知らないけど、奥さんとか彼女と普通にしてても浮気する男の人はいるよ」

「どうしたの、急に?」

圭が眉間にシワを寄せた。

「外で他の女としてるのがバレないように奥さんともしてるって。夫の義務みたいなものかなって言ってた」

実際に浮気をしている誰かから聞いてきたような口ぶりだ。

「誰が?」

「私が今付き合ってる人」

「ええっ?! 春菜、不倫してるの?!」

「そうだけど……何か問題ある?」

悪びれもせずそう言う春菜に、紫恵と圭は顔をひきつらせた。

「問題ある?って……大アリでしょ?」

さすがの圭も春菜の言葉に危機感を覚えたのかもしれない。

紫恵も言葉を失ったままだ。

「割りきった大人の付き合いよ?」

「それ虚しくない?」

「別に。私は彼が好きだし、彼も私が好きだって言ってるからいいんじゃない?奥さんと別れて私と結婚したいくらい好きらしいけど、私は争うの面倒だから結婚する気はないって言ってある」

「なにそれ……」

なんとも自分勝手な言い分だ。

逸樹の周りに春菜と同じ考えの人がいたらイヤだと紫恵は思う。


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