花盗人も罪になる
小さな手をつないで歩きながら、女の子はキョロキョロと辺りを見回して『しーちゃん』を探している。

「お名前教えてくれる?」

「はやかわ ののです、3歳です」

親にそうしつけられているのか、こんな小さな子が名前と歳をハッキリ言えることに香織は驚いた。

「うわ、賢い……。ののちゃんかぁ。かわいい名前だね」

「お姉ちゃんは?」

「私?近田 香織です」

「じゃあ、かおちゃんだね」

そう言って『のの』は満面の笑みを浮かべた。

香織は小さなお友達に慣れない呼び名で呼ばれて、なんだかくすぐったい気分だ。

「かおちゃんはママと来たの?」

「違うよ。大人だから一人で来たの」

「ののはね、いつもしーちゃんと一緒に来るんだよ。お手伝いするの」

「へぇ……えらいね」

ずいぶん人懐こい子だ。

知らない人に連れ去られたりはしないかと、香織は少し心配になる。

「あ、しーちゃんいた!」

『のの』が指差す先には、慌てた様子の女性がいた。

『しーちゃん』は小学生くらいのお姉ちゃんかと思ったら、大人の女性だったことに香織は驚いた。


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