初めての相手は無愛想上司


いつもと変わらない日々
私が何も話さないから
あれだけだしつこかった伊藤さんは
聞かなくなった

いや、聞き出そうにしているだけ
「桜庭さん、」


辛そうな顔してます、と
何故か泣きそうな伊藤さん

そんなことないって言いたかった
けど言えない
なんでよ…



「今日は暇だから、午後から半休取りなさい」


蔵田課長までも、心配してくれ
申し訳なく思う


『いえ、大丈夫です』


そう言ったが、総務がうるさいからと
休むように言う
はい、と言うしかない


予想外の休みに
家に帰る気分になれず
決行しようと決めていた事を早めた


電車に乗り
いつもの駅で降りる

いつもなら駅を出れば
左へと歩けばアパート方面
けど今日は右へ歩き出した


これで最後、と
何度も自分に言い聞かせながら歩く
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