憑代の柩
 


 衛が固唾を呑んで、自分の顔を見守っていた。

 私はそのまま、告白を続ける。

「花屋の店員も、秋川奏もあのとき死んでいます。

 ロッカーには二つの遺体が隠してありましたから。

 私は、あの場に居なかったはずの第三の人間」

 自分に向かい、手を振り笑う秋川奏。

 あのとき爆風を浴びる直前、彼女の口がなんと動いたのか、今ならわかる。

『さよなら――』
と。

 自分が仕掛けたのではないとしても、彼女は爆弾のことを知っていたのでないか。

 今は、あそこで止められなかったことだけが悔やまれる、と目を閉じた。

「私は貴方の雇っていた探偵で、流行さんの相方、八代隆(やしろ たかし)の助手です」

 衛が一瞬、言葉に詰まった。

「……いつから」

「いつから助手をやっていたのか、ですか?

 それとも、いつから八代とつるんでいたのか、ですか?

 或いは、いつから記憶が戻っていたのか?」

 そう言い、微笑む。
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