憑代の柩
天下の御剣衛の婚約者が安いからといって、わざわざ霊が出る部屋に住むこともあるまいと思ったのだが。
衛はあまり、恋人のそういうことには口を挟まないタイプの人間らしかった。
話している間に鍵をかけてしまっていた部屋の戸を振り返りつつ、
「その、なんか出るって話は誰に聞いたんですか?」
と訊いた。
「あづさだ」
と言いながら、衛は先に階段を下り始める。
「あづささんは、大家さんから訊いたんですか?」
「大家からも自殺のあった部屋だと聞いていたそうだが。
自分も霊を見たそうだ」
「自殺した男の人の霊が出るって言われて、なんて言ったんですか?」
「妄想だろう」
「最悪の婚約者ですねえ」
と返しながら、鉄錆の浮いた白い手すりを掴んで、後に続いた。
太陽が沈む方角を見ると、隣の家の塀の上にあった茶色い頭が沈んだ。
もしや、あれが警察か、ガードの人間だろうか。
だとしたら、かなり間の抜けた感じだが。
大丈夫だろうか? と思ったとき、衛はこちらを見ないまま、
「あれはうちのじゃないぞ」
と言った。
衛はあまり、恋人のそういうことには口を挟まないタイプの人間らしかった。
話している間に鍵をかけてしまっていた部屋の戸を振り返りつつ、
「その、なんか出るって話は誰に聞いたんですか?」
と訊いた。
「あづさだ」
と言いながら、衛は先に階段を下り始める。
「あづささんは、大家さんから訊いたんですか?」
「大家からも自殺のあった部屋だと聞いていたそうだが。
自分も霊を見たそうだ」
「自殺した男の人の霊が出るって言われて、なんて言ったんですか?」
「妄想だろう」
「最悪の婚約者ですねえ」
と返しながら、鉄錆の浮いた白い手すりを掴んで、後に続いた。
太陽が沈む方角を見ると、隣の家の塀の上にあった茶色い頭が沈んだ。
もしや、あれが警察か、ガードの人間だろうか。
だとしたら、かなり間の抜けた感じだが。
大丈夫だろうか? と思ったとき、衛はこちらを見ないまま、
「あれはうちのじゃないぞ」
と言った。