俺様上司と身代わり恋愛!?


伸介のうしろを歩いてついた駐車場は、思ったとおり、シンとしていた。
車はまだ残っているから、そのうち誰かがくる可能性はあるし……と思い、「話ってなに?」と単刀直入に聞く。

広い間隔を置いて立っている街灯が心元なく照らすなか、伸介は情けないような笑みを浮かべた。

「いや、こないだ、彼女と別れたって話しただろ? で、ここ数日、ずっと考えてたんだけどさ。やっぱり俺はゆずといるときが一番楽しかったかなって思って」
「……だから?」
「ヨリ戻さない?」

軽い言葉に、はぁ……と自然とため息がもれていた。

伸介から連絡がくるようになって三週間。ずっと無視し続けてきて、待ち伏せされたって迷惑だって断ってるのに。

それでも、こんな風に言えばヨリを戻すだろうって……私は、そんな風に見られてるんだろうか。
そう考えたら、悲しくなってしまった。

『軽くみられやがって』
いつか、課長が言っていた言葉が頭に浮かび、本当だなと思う。

ただ、私を好きだって言ってくれる人に喜んでもらいたかった。
だから、いつだって最優先して、都合だって調子だって合わせてた。

だけど、都合のいい女になりたかったわけじゃないのに……と思い、目を伏せた。

私は、その辺の調整がうまくできていなかったんだろう。
伸介の目に、私がどう映っているのかを改めて思い知った。

「ごめんなさい」

気持ちが冷めてしまっているとはいえ、それなりに気持ちをこめて謝ったつもりだったのに。
伸介は「まぁ、そう言うなって」と笑い近づいた。

カツカツと足音を立てて近づかれ、一歩後ろに下がると、腕を掴まれた。

暗く、人気のない駐車場。
腕を掴んだまま、伸介が続ける。


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