俺様上司と身代わり恋愛!?


「……あ」

土日を挟んだ、翌週月曜日。エレベーターホールで課長と出くわし、思わず声がもれた。

エレベーター待ちをしているのは、課長と私だけで……気まずさを覚えながら「おはようございます」と言うと、少し遅れて「おう」と返ってきた。

いつも出社する時間より、三十分も早い八時二分前。

気まずさや気恥ずかしさから、出社時間をずらそうとしたのは、課長も同じようだった。
こんなところで気が合ってしまい、困り果てうつむいた。

他の人の気配を感じない、エレベーターホール。
課長と並んでエレベーターを待つ。

――金曜日。
課長の車に乗って着いた先は、課長の住むマンションだった。

戸惑いながらも中に入ると、すぐに手を引かれ寝室に連れ込まれた。
明かりをつけるのも忘れて行為に及んだことを思い出すと、体温が一度も二度もあがりそうだ。

ベッドに押し倒されて、触れてくる課長の手に、嬉しさなのか多幸感なのかわからないけれど、身体が震えた。
……でも。

『あの……っ、あの、課長……』
『……なに』

行為を止める呼びかけをした私に、課長は一拍遅れてから返事をした。

ぶつかった眼差しには熱がこもっていて、胸が飛び出すんじゃないかってほどに跳ねた。

正直、もう、どうなってもいいと思えた。
どうにでもしてほしいって……でも。

『私、以前、Fカップだって言ったんですけど……それ、嘘なんです』

心拍がどんなに大きく跳ね上がったところで、私の胸はFカップには届かない。

土壇場になって、いつかの会話を思い出してしまい言わずにはいれなくなって口にすると……課長に、はぁ……とため息を落とされた。


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