俺様上司と身代わり恋愛!?


恩田さんの注意を聞く限り、どうやらサンウェル大澤さんから残高確認の電話が入り、それを折り返し、会社経営とは関係ない一般社員に伝えてしまった、という事のようだった。

まぁ……サンウェルさんじゃなくても怒るような事態ではあるな、と思う。

すごく大きな企業ともなれば、決算後の収益やらを公表もしているけれど、地元密着型のうちの会社が取引しているような企業はそこまで大きな企業じゃない。

個人事業や、それよりも少し大きいくらいの会社がほとんどだ。

従業員数は多いところでも三十人に満たないくらいだろうし、サンウェルさんも確か十人だとかそんなだった気がする。

となれば、そのうちのひとりに会社の通帳の残高が知られてしまったというわけで……。
知られたからどうだってわけではないんだろうけれど、だからといって知られていい内容ではない。

恩田さんに電話を代わっても怒りが収まらず、課長まで回ったところを見ると、大澤さんの怒りは相当だと分かった。

チラッと眺めた先で、課長が受話器を置く。
それから、「恩田、ちょっと」と、恩田さんを連れて課の外に出てしまった。

多分、今野さんへの注意を伝えているんだろうけれど……。
デスクに座ったまま、ショックからか目を伏せている今野さんに、何か話しかけようと思うも。

私が話しかけたところでなぁ……と、ただ睨まれる気がして、フォローしようとした言葉をぐっと飲み込んだ。




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