夜の図書室で
「ごめんね。あたしばっかりしゃべって」


 迷惑だったでしょ。ナナちゃんは、少しだけ申し訳なさそうな顔をしていた。


「いや、別に」


 なんでそんなに僕に話したいのか。


「なんかね……。生きていたってことを実感したかったんだよね。あたしがこの世にいたってことを」


 ナナちゃんは、教室の右から左へ、黒板の前を通り、窓際に歩いていくと、窓ガラスの前で立ち止まった。


 後頭部に、赤い血がべったりついていた。髪の毛にからまり、固まったような赤黒い色をしていた。ひどかった。グロテスクなホラー映画以上に、見たくないものだった。


 見てしまった僕は、目をそらした。
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