恋することを知った恋
黒瀬先輩も同じように鞄を持った。
「杏里は?帰らないの?」
湧太先輩があたしに声をかける。
「はい、もう少ししたら帰ります」
今帰ろうとすれば先輩たちと一緒に校舎を出ることになるから、それは遠慮しておきたい。
普通の女子高生や麻奈美みたいなタイプの人間だったら、一緒に帰っていいか聞くのだろう。
でもそうは望まないあたしは、ただ小さく挨拶した。
「そか、じゃあまたね」
そう言って、湧太先輩はあたしに手を振った。