追いかけっこが、終わるまで。
家に帰って準備を整えている間、光輝くんは車で待っていると言ってくれた。

部屋に上がると言われたらどうしようと密かに焦っていた私は、ほっとすると同時に、慣れてそうなんだよね何につけても、と軽く傷つく自分に気づく。

ワガママなのは私だ。気づくといつも、自分の気持ちしか見えなくなる。



出勤用にパンツスーツに着替えて気合を入れようとして、彼の服装を思い出す。

そうだ、軽くとはいえこれから一緒にランチをするのに、そんな格好で行ったらおかしい。

一瞬考えて、カジュアルなワンピースに、軽いジャケットを持って行くことにする。

アクセサリーをつければ、ディナーで木島さん達と合流しても平気だろう。



小走りで駐車場に向かうと、光輝くんは運転席側のドアにもたれて、電話中だった。

「うん、そんじゃ着いたらまたかける」

私に軽く手を上げながら、通話を終える。

「速人くん?」

「そう、今日は使わないから別に急がなくっていいってさ。天気いいからさ、外で食わない?」

「外?」

こんな天気の日にちょうどいい、大好きなフレンチスタイルのカフェがある。

「行きたい店ある?」

お気に入りの店名を告げると、わかった、乗って、と微笑んだ。場所も知ってるみたいだ。



あれ?私、こういう人だったかな。

よく知らない人とご飯を食べる時は、相手が食べたいものを聞いて自分もそれが好きって顔をするのが定番のはず。

どこまで自分を出していいのか、見極めるのに時間がかかるはずなんだけど。



彼のペースに乗せられているようで、でも自分勝手を言ってもいるようで、不思議な感じ。

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