nine hundred Lies【暗詩】

#030  水鏡の月



渇れない涙のみずたまりで

そこに映った月のように

揺らめいては形を変えるけれど

消えてしまうことはない君を

俺は必死で守ってる

それだけが俺が俺でいる手段だと知っているから





消せない思考のふきだまりで

底に溜まった泥のように

うごめいては心を汚すけれど

消えてしまうことはない傷を

俺は必死でかばってる

それだけが俺が俺である理由だと知っているから





燃えない炎のいきどまりで

それに見合った塵のように

煌めいては自分を騙すけれど

消えてしまうことはない日々を

俺は必死でたぐってる

それだけが俺が俺でいる記憶だと知っているから





解けない答えのわだかまりで

それを嫌った罰のように

ざわめいては時間を戻すけれど

消えてしまうことはない意味を

俺は必死で背負ってる

それだけが俺が俺である愚行だと知っているから





夜空に浮かんだあの月は

俺が俺であることを

知っているのか、いないのか?



降り注ぐ光はいつだって

俺を突き刺しては惹き付けるのに







【#030  水鏡の月】
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