さいごの夢まで、よろこんで。
笑いたかったら、笑ってもいいよ。



笑いたかったら、笑ってもいいよ。

そう前置きして、頭上に広がる空を見上げて息を吸い込んだ。

私には夢がある。
好きな人と、手をつないで、綺麗に咲き誇った花の絨毯が広がる丘みたいなところで、二人で空を見上げる。
そしたら、これからもずっと一緒にいよう、って言い合って、くすっと笑い合って。
そういう、ちょっとした幸せみたいなものを、好きな人と、大切な人と共有して感じたいなあ。

空に向けていた視線をおろして、隣を見ると、たいして興味もなさそうな顔で前を見ている。

「…ふーん。終わり?」
「あ、雪とかパラパラ降ってたらもっと素敵かも」
「季節を統一しろよ」

馬鹿じゃねーの、とでも聞こえてきそうだ。

「笑わないんだね」
「いや、笑わないっつーか…そんな大層なことでもなくね?やろうと思えば出来るだろ、それくらい」

予想通りの言葉を返されたので、そうだねって曖昧に笑ってみせた。

そろそろ、同じペースで歩くことにも無理が出て来たかもしれない。
いつのまにか身長差があいて、歩幅だってこんなに違って、私の言葉へのリアクションがそっけなくなって。
その上、この先、お互いが見ていく景色は、もっと言えば未来は、きっととてつもなく違っていくんだろう。

馬鹿だなあ。
夢は、簡単には叶わないから、夢なんだよ。




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